DHstyle 2025年冬号
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今回の論文は2024年の「Journal of Periodontology」10月号に掲載された台湾の台北栄民総医院のChenらによる「Survival rate of teeth adjacent and nonadjacent to  近年、インプラントは適切な術式や治療計画に基づいた治療を行えば、予後が良好な治療法として、広く用いられています。たとえば、インプラントの10年生存率は94.6%、成功率は89.7%と報告されています。しかし、インプラント隣接歯には、う蝕、歯の破折、動揺などの合併症が生じることがあります。この研究では、インプラント隣接歯の喪失リスクとその要因を調査しています。 本研究は、2000〜2020年の間にカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)歯学部でインプラント治療を受けた患者の電子カルテを用いた、後ろ向きコホート研究として行われました。隣接歯(インプラントの隣にある歯)と非隣接歯(インプラントの影響を受けない歯)の2つのグループに分けて調査されました。①隣接歯:インプラントに隣接し、12ヵ月以上機能している固定性補綴物を支持する歯②非隣接歯:同一患者のなかでインプラントの影響を受けない歯 治療前から抜歯が予定されていた歯や、インプラント治療完了前に喪失した歯は除外されました。データには、患者の年齢、性別、治療歴(修復治dental implants: A retrospective cohort study」です。94 DHstyle 2025 WINTER療、根管治療、歯周治療)、歯の喪失率、喪失理由(う蝕、破折、歯周病、根管治療歴)が含まれました。統計解析には、カプラン-マイヤー法、ロジスティック回帰分析が用いられ、喪失リスクが比較されました。 その結果、787名(男性389名、女性398名、平均年齢58.8歳)が対象となり、2,048本の隣接歯と15,637本の非隣接歯が分析されました。観察期間は12〜258ヵ月で平均57.1±44.1ヵ月でした。 隣接歯のうち、63.9%に修復治療歴があり、10.4%が根管治療歴、36.1%が歯周病の既往がありました。歯の喪失率は、隣接歯で166本(8.1%)、患者単位では787人中119人(15.1%)で、おもな原因は、破折(45.2%)、う蝕(28.9%)、歯周病(24.1%)でした。非隣接歯では、104本(0.7%)、患者単位では75人(9.5%)が喪失し、おもな原因は、歯周病(51.9%)、う蝕(28.8%)、破折(17.3%)でした。 隣接歯の5年生存率は96.7%、10年生存率は89.2%でした。一方、非隣接歯は5年生存率が99.8%、10年生存率が99.3%であり、統計的有意差が認められました(図1)。また、隣接歯は非隣接歯に比べて高い喪失リスクがあること(オッズ比:13.15、95%信頼区間(以降95%CI)[10.25–16.88]、p<0.001)が示されました。 破折による喪失は、隣接歯の喪失原因として最多で、とくに根管治療歴がある場合、破折のリスインプラントに隣接した歯の予後は悪い?論文選択の背景論文の要旨

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