第1回 図❶ 目が不自由な患者さん。歯を視認できなくても、十分にプラークコントロールができる 「何度も何度もセルフケアの説明をしたはずなのに、患者さんのプラークコントロールが一向によくならない」という悩みは、臨床現場においてOHIの“あるある話”、“ぶち当たる壁”であり、永遠のテーマではないでしょうか。いかに患者さんに理解させ、実践してもらえるか。その伝え方には多くの工夫が必要であることを、失敗と経験から学んできました。これから4回にわたって「患者さんが変わる! スベラナイOHIのコツ」と題してお話しします。 図1は全盲の患者さんの口腔内写真です。過去の歯科既往歴はさておき、日ごろのセルフケアは完璧で、良好な歯肉の状態と評価できます。今後、プラークを起因とした問題は想像しがたく安心し76 DHstyle 2025 WINTER これまで歯磨き指導を何度も受けてこられたであろう初診の患者さん(中年男性)に対し、「人は歯磨きのためだけに生きてはいませんからね~」と言うと、間髪入れずに「先生、イイこと言うね~」と返ってきました。患者さんは残念ながらお世辞にもよいとはいえないプラークコントロール……。こんなとき、あなたならどうしますか? 実は、この先が歯科衛生士の腕の見せどころです! いままでとは一味違うOHIと患者さんへの寄り添いが必要なのです。ていますが、その裏には視覚を失ったハンディキャップをカバーするために、日ごろより触覚や聴覚を研ぎ澄まして歯を磨いておられることは想像に難くありません。 患者さんにプラークコントロールをレベルアップしてもらうためには、まさに自身の体と口腔内に起こっていることを、いかに自分事化して考えてもらえるかに尽きると思います。 いまからOHIに臨むぞという場面で、いきなり患者さんに歯磨きの日常習慣を尋ね、次に患者さんの歯肉の状態やプラークコントロールを評価し、そして磨き残しを指摘して手取り足取りの歯磨き指導を行う……。一見、スムーズな流れに感じますが、このようなOHIを行っていると、プラークコントロールの改善に失敗する可能性が高OHIのコツって?患者さんの思い・考えを聴いていますか?「相手に受け入れられる伝え方」
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