DHstyle 2025年夏号
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感染制御学ノート 121分類:細菌形態:短い棒状感染経路:飛沫感染、接触感染ワクチン:百日咳ワクチン(5種混合ワクチンとして使用中)◦感染力が極めて強い。◦痙攣性の咳(痙咳発作)が特徴である。◦乳幼児では重症化しやすい。◦有効なワクチンがある。図❶ 顕微鏡で見た百日咳菌1)。菌の大きさは0.2~0.5×0.5~1.0µm(µm:1mの100万分の1)。鞭毛、芽胞はない。画像では菌が赤色をしているが、これは見やすくするためのものであり、実際に色がついているわけではないPoint 「百日咳」という名前が示すように「百日=長期間続く」という意味です。個々の場合によって異なりますが、だいたい1ヵ月間程度は咳が続きます。 今回は、急性の気道感染症の原因となる百日咳菌(Bordetella pertussis)を紹介します。百日咳については、過去に本連載でも取り上げていますが2)、すでに12年以上経過していること、さらに最近は百日咳菌感染者数が過去になく増加しているため、最新の情報をお届けしたいと思います。原因となる微生物は、細菌に属するグラム陰性桿菌a)です。鞭毛や芽胞はもちません。学名のBordetella pertussis(ボルデテラ・パータシス)の「pertussis」は「重症の咳」を意味するsever coughからきています。英語圏では、whooping coughとも呼ばれますが、これは「ぜーぜーいう咳」の意味です。 百日咳菌は強い感染力をもっており、読者のみなさんも感染した経験があるかもしれません。近年では感染者数が増加しています(図2)。この感染者数の増加の原因はよくわかっていません。 百日咳菌が含まれた鼻咽腔や気道からの分泌液による飛沫感染と接触感染が感染経路となります。佐藤法仁 Norito SATOH岡山大学 副理事(研究・産学共創総括担当)岡山大学 副学長(学事担当)・URA立命館大学 総合科学技術研究機構 教授内閣府 上席科学技術政策フェロー症状vol.⃝急性の気道感染症の原因となる百日咳菌はじめに百日咳菌(Bordetella pertussis)DATA

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