DHstyle 2025年秋号
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飲食物 表❶ 20世紀と21世紀のカリオロジー20世紀むし歯菌う蝕を引き起こす食べ物う蝕を作りやすい歯、唾液、歯並びなど微生物乳酸桿菌a:Keyesの輪図❷ う蝕の成り立ちモデル(20世紀)。Keyesの輪は宿主、細菌、食餌の3つの因子がすべて揃ったとき、う蝕が起こることを示している。さらに、時間が因子として加えられNewbrunの輪が提唱された ⿠ミュータンス連鎖球菌 ⿠ ラクトバチラス(乳酸稈菌 ⿠砂糖(ショ糖)/二次う蝕の原因菌)宿主と歯う蝕ミュータンス連鎖球菌飲食物砂糖(ショ糖)特集 カリオロジーを知って活かす! これからのう蝕予防 1721世紀 ⿠ミュータンス連鎖球菌 ⿠ラクトバチラス(乳酸稈菌) ⿠ ビフィドバクテリウム(ビフィズス菌) ⿠Scardovia wiggsiae ⿠Veillonella 種 ⿠他にもたくさん ⿠ 発酵性糖質(ショ糖、ブドウ糖、果糖、 乳糖、調理したデンプンなど)宿主と歯う蝕微生物時間b:Newbrunの輪作るとされました。この考えが20世紀の歯科界の常識でした。しかし、1994年にMarshが生態学的プラーク説を提唱しました。現在のカリオロジーは生態学的プラーク説が深化したものになっています。 現在のカリオロジーでは、むし歯菌(う蝕原性菌、つまり酸産生菌)の種類がずいぶん増えています。ミュータンス連鎖球菌のように不溶性グルカンを作れない細菌種でも、酸を産生できるならバイオフィルム・マトリックスによって歯面に付着して歯を脱灰できるからです。また、う蝕を起こす食べ物も砂糖だけではなく、ブドウ糖やデンプンなどもむし歯菌の餌となって酸を作ります(表1)。2.う蝕の成り立ちモデル う蝕の成り立ちを示す20世紀のモデルは、Keyesの輪でした(図2a)。Keyesの輪は宿主と歯、微生物、飲食物の3つの因子がすべて揃ったとき、う蝕が起こることを示しています。ですから、3つの因子のどれかひとつでも取り除けば、う蝕の予防は可能であるとされてきました。さらに、時間が因子として加えられNewbrunの輪が提唱されました(図2b)。

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