DHstyle 2025年秋号
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今回の論文は、2025年の「Journal of Clinical Periodontology」に掲載された「Differential Response to Non-Surgical Periodontal Therapy Between Intrabony and Suprabony  歯周炎による骨欠損形態は、大きく分けて「水平性骨吸収」と「垂直性/骨縁下欠損」に分けられます。臨床的な印象としては水平性骨吸収の場合のほうが治療によく反応すると感じられます。他方、骨縁下欠損は、たとえば歯周再生療法の適応に「3mmを超える骨縁下欠損」があるように、外科的処置の適応になることが多いと考えられます。しかし、実際に水平性骨吸収と骨縁下欠損とで、非外科的歯周治療の反応が異なるのかどうか、評価された研究は少ないのが現状です。 今回紹介する研究の目的は、骨縁下欠損が非外科的歯周治療(NSPT)に対して、水平性骨吸収と比較して異なる治癒反応を示すかどうかを検証することでした。 本研究は、King’s College Londonの Oral, Dental and Craniofacial Biobank に登録された患者を対象とした横断研究で、NSPTの効果を検討したものです。対象は2020年12月から2023年3月までに登録された723名のうち、実際にNSPTを受けた200名でした。患者は、平均年齢47歳、BMIは平均26.5、男性が58%を占め、糖尿病患者は約10%、そのうち血糖コントロール不良の患者イギリスのKing’s College LondonのCuozzoらによるDefects:A Retrospective Analysis」です。110 DHstyle 2025 AUTUMNは5.5%でした。半数以上が非喫煙者で、ほとんどの患者が1日2回以上の歯磨きを行い、9割近くが補助器具による清掃を行っていました。 全顎の歯周組織検査が6点法で行われ、プロービングデプス(以下、PPD)、臨床的アタッチメントレベル(以下、CAL)、出血率などが記録されました。診断は2018年の歯周病分類に基づいて行われ、PPD>4mmの部位に対してデンタルX線画像解析が行われました。その結果、欠損の約7割が水平性骨吸収(骨欠損が2mm未満)であり、骨縁下欠損(骨欠損が2mm以上)は7.5%にすぎませんでした。平均的な欠損深さは3.4mmでした。 治療は平均2回の来院で行われ、術者はおもに学生で、歯科衛生士も一部含まれました。つねに専門医の監督下で処置が行われ、超音波スケーラーと手用インスツルメントの併用が多く、15%程度の患者には抗菌薬が投与されました。治療終了から平均約3ヵ月後に再評価が行われました。 治療の結果、平均をみると、PPD>4mm超の部位の54%が閉鎖し、PPDは0.58mm減少、CALは0.26mm改善しました。出血率は40%から21%に低下し、プラークスコアも大幅に改善しました。とくに初期のPPDが深い部位ほど改善幅が大きく、7mm以上の部位では平均2.7mmの減少と1.8mmのCAL改善を示しました。 骨縁下欠損は初期のPPDが深く(平均6.13mm論文選択の背景論文の要旨非外科的歯周治療は骨縁下ポケットに対してどれだけ有効か

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