DHstyle 2025年秋号
15/20

患者さんが変わる! スベラナイOHIのコツ 89 明確な目標を患者さんと共有する歯科衛生士であれば、ブラッシング時の出血は見過ごせないサインであることを当然知っていると思います。しかし、患者さんのなかには「強く磨きすぎて歯ぐきを傷つけたのでは」と考え、ブラッシングそのものを控えてしまう方もいます。ここで現に大切なのは、歯肉からの出血を止める必要性を理解してもらうことです。 そのためには、「出血が問題である理由」をバイオロジーの視点から、できるだけ専門用語を使わず、患者さんが納得できるようにシンプルに伝えることが重要です。歯科衛生士と患者間において、「出血を止める」という共通認識をもつことが重要です(図2)。患者さんへの説明のポイントを箇条書きでまとめます。1.口腔内細菌叢 ⿠口の中に棲みついている菌たちには、“メンバー表”みたいなものがあり、数は減ったり増えたりするけれど、その顔ぶれは生涯変わらない(菌数の増減はあっても人物像は変わらない) ⿠棲みついた口腔内細菌(感染した結果)を恐れず、病気を発症(再発)させなければよい ⿠歯周病は初期段階であれば、セルフケアや歯磨き習慣で十分に改善できる(セルフケアの意義や健康な歯肉の色や形を知る→炎症を見極める判断力を養う:本誌2025年春号参照)2.出血=悪玉菌のご馳走 ⿠歯ぐきから出た血は悪玉菌の“餌”となり、出血を放置するとますます菌が元気になり、増殖・狂暴化に繫がる。出血がある=病気のサイン:進行形であることのサインであり、見過ごせない出血がなくなった=改善傾向にある:改善した証拠(あるいは健康である)※ただし菌を駆逐できたわけではなく、栄養を絶たれて冬眠(活動できない)状態のため、油断大敵である3.悪玉菌の排泄物 ⿠悪玉菌が血という栄養を摂ったのち、人と同\ START /歯ぐきの出血は、病気のサインでもあるんですよ歯磨きで傷つけちゃったかなと思っていました……傷ではなく、炎症が起きた結果です。歯ぐきの出血はお口の中の悪玉菌のご馳走(餌)なので、放っておくと菌が元気になって悪さをします悪玉菌かぁ、口の中にもいるんですねそうなんです。悪玉菌は口の中に棲みついていて、歯周病を引き起こします。ただし、餌がなければ活性化しないので、悪玉菌の餌である出血を止めなければなりません図❷ 歯肉の出血がなぜ問題であるかを伝える必要があるDH谷垣DH谷垣患者さん患者さん歯ぐきの出血が、口の中にそんなふうに影響しているとは知りませんでした……悪玉菌は血から栄養を得て、毒素や酵素を出します。それらが歯を支える骨を溶かすので、歯がぐらぐらしてしまうのです。それが、歯周病です出血を止めなければいけない理由がわかりましたどの部位からの出血かを探して、みつけたら積極的に磨いてみてください。合言葉は、「出血を止める」です!\ GOAL /「出血を止める」という共通認識をもつわかりやすい改善の目安

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る