歯科で活躍する管理栄養士 栄養指導・必携マニュアル
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1CAPTER 1正常な経口摂取こそ現代医学の努力目標(点滴・経管栄養が劣る理由)H012012人間の身体は、栄養摂取によって毎日たくさんの細胞が入れ替わります。身体を動かす筋組織の新陳代謝は60日のサイクルで行われます。つまり、2ヵ月前に食べたもので身体はできています。食事は、直接身体を合成するものを取り入れることであり、食事はまさに身体そのものと認識しましょう。口腔機能が衰え、口からの栄養摂取が困難になると、栄養管理の方法も経口摂取から胃ろう、中心静脈栄養などの代替栄養に移行します。「口から食べられなくなっても、点滴や胃ろうがあるから大丈夫」などと安易に考えてはなりません。胃腸を使う胃ろうは生物としての栄養は摂取できますが、味覚も満足感もなく、消化系・代謝系の生理的な働きは経口摂取に大きく劣り、QOLの著しい低下を招きます。また、中心静脈栄養や点滴では、経口摂取に比べて著しく不十分な栄養摂取しかできません。人工栄養法を長期間続けていると、消化管の機能低下による萎縮、口腔乾燥や細菌の増加、認知機能の低下を招くほか、胃腸を使わないため腸内細菌のバランスも崩れ、免疫機能も低下します。人が人間らしく生きるために、口から食べることはとても大事な要素です。単に「栄養を摂る」ためではなく、食べる楽しみや喜びを味わい、生きる活力を得られます。また、身体の酸化ストレスを減らすことができる大切な行為です。さらに、口から食べることによって口腔から咽頭、食道、胃や腸といった身体の各器官が活性化し、そのさまざまな機能が正常に保たれます(図1)。食物をしっかりよく嚙むと、脳の認知機能を司る海馬や前頭前野が刺激され、血流が増えることが確認されています。歯を失い、義歯も使わない人の認知症発症リスク 「口から食べる」ことの重要性

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