歯科で活躍する管理栄養士 栄養指導・必携マニュアル
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刊行にあたって本書は、歯科診療所で保健指導を担う管理栄養士さんが、「歯科でなぜ保健指導?」という患者さんの疑問に明快に答え、自信をもって指導できるようになることを念頭に置き、歯科特有の内容と栄養学の接点を実践運用するためにまとめたものです。世界一の長寿国となった日本。平均寿命は伸びましたが、「健康な状態で」長生きできることが重要です。健康寿命延伸にとって極めて重要なのが口腔機能、とりわけ「嚙む機能」です。嚙める人と嚙めない人との差は、年単位で比較すると体型や容姿、老化などに歴然と現れます。さらに、低栄養や不適切な食習慣がう蝕や歯周病などの口腔疾患と生活習慣病(NCDs: Non-Communicable Diseases)のリスクを増大させるという研究は、数多く報告されています。健康維持のためには、遅くとも50代からの歯科疾患リスク低減や咀嚼機能の環境整備が必要であり、歯科治療やリスク低減治療の際には、それらと関連した栄養指導・保健指導が必須のものとなってきます。いくら優秀な管理栄養士さんでも、歯科診療所に赴任して、「何からやっていいの?」 「歯科疾患と栄養の関係は?」 「歯科疾患と関連した保健指導にはどのような場面があるの?」 等々、戸惑うことも多々あることでしょう。栄養学と歯科医学を繫ぐ知見が満載の本書を活用すれば、「なぜ歯科で生活習慣指導を?」という患者さんにも納得のいく説明ができるようになります。歯科医師や歯科衛生士から、たとえば「この患者さんは大臼歯がなくて咀嚼機能が低いので、タンパク質低栄養になっていないかをチェックして筋肉を減らさない食事指導をお願いします」と指示されたとき、なぜその指導が必要なのかを瞬時に理解して、スムーズな連携が可能になるでしょう。歯科の役割が大きく変化しています。患者さんの健康寿命を延伸するためには、医科と歯科の連携だけでなく、口腔機能に関しては理学療法士や言語聴覚士、食事指導に関しては管理栄養士など、多職種との連携が不可欠です。本書をきっかけに歯科で働く管理栄養士さんが増え、健康維持増進のために歯科に通う患者さんが増えていくことを願っております。神奈川県・武内歯科医院/医学博士 武内博朗刊行にあたって

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