APTER 23C 補綴治療 = 嚙める機能を回復し、H052歯の数と咀嚼能力には高い正の相関関係があり14~16)、咀嚼能力が高いほど健康寿命の長さに繫がることは多くの研究でわかってきています。歯の喪失による咀嚼機能低下は、肥満や糖尿病、心筋梗塞、フレイルからの骨折や転倒、サルコペニアなどのリスクを高める17~20)ほか、残存歯の少ない人の認知症のリスクが高いことも、あきらかになりつつあります。失った歯を被せものや義歯・インプラントなどで補う治療を補綴治療といいます。むし歯や歯周病が進行して自分の歯を失ってしまっても、補綴治療で歯を補うことで嚙み合わせを回復させ、咀嚼機能を取り戻すことができます。補綴治療は単に失った歯を補って終わりではなく、なんでも嚙めるようになった患者にその咀嚼機能をフルに生かしてもらい、食生活の改善から体組成・代謝の改善、そして健康寿命の延伸に繫げてもらうまでがセットです。歯を失って、嚙み応えのあるものを敬遠するようになっても、嚙まずに食べられる食品でとりあえず食事はできてしまいますし、痛みや不快感がなければそのままにしてしまっている人は一定数います。いまは問題なく生活できていても、嚙めない状態が長く続けば血糖値の上昇、骨格筋量の減少や内臓脂肪量の増加など、身体に深刻な影響を及ぼすことを、患者にしっかり理解してもらうことが大切です。 体組成・代謝を改善すること 補綴栄養学~適切な食習慣へ移行するために~
元のページ ../index.html#14