歯周病菌が全身の血管に流れ込み、 管理栄養士が知るべき歯周病と全身疾患・生活習慣病との関係027図❶ 歯科疾患と生活習慣病を繫ぐキーワード❶う蝕と高血糖❷歯周病と慢性炎症・歯原性菌血症❸咀嚼機能低下と栄養状態が上昇します。また、肉類、緑黄色野菜類の摂取か減少し、タンパク質低栄養とビタミン・ミネラル低栄養に繫がり、骨格筋量が減少するフレイルに関係します。生活習慣病の上流イベントである歯科疾患を単位治療するばかりでなく、その根本原因である食習慣・生活習慣、結果として変化した細菌叢などに対して、保健指導を適確に実施できれば、いま以上に疾患の発症予防・重症化予防が進むと思います。私たちの研究分野の指導者である元国立感染症研究所・国立保健医療科学院部長で鶴見大学名誉教授の花田信弘先生が、たいへん趣のある指針を述べておられるので紹介しておきます(図2)。とりわけ、歯科で働く管理栄養士や保健指導に携わる職員の崇高な使命と任務として座右の銘にしてください。歯周病は、細菌の感染によって起こる炎症性疾患です。口腔内には約700種類の細菌が棲んでいるといわれますが、そのなかでも悪玉菌の代表であるPorphyromonas gingivalis (P. g.)菌、Tannerella forsythus (T. f.)菌、Treponema denticola (T. d.)菌などが、歯周病の原因菌です。歯と歯の間にプラーク(歯垢)が蓄積して古くなると、歯周病菌が好む環境となります。歯周病菌は歯周ポケットの中で増殖し、歯肉からの出血や腫れ、歯周組織の破壊を引き起こします。ポケットはさらに深くなり、細菌の温床となって炎症が増大します。増殖を繰り返す歯周病菌や毒素は、傷ついた歯周組織から毛細血管の中に、毎日24時間常に入り込み、血流に乗って全身の臓器を傷害し続け、炎症を起こします。この歯周病のもたらす炎症が、糖尿病、動脈硬化、心筋梗塞、誤嚥性肺炎、骨粗鬆症、認知症などさまざまな病気に関与していることが、いろいろな研究でわかってきました。図❷ 花田信弘氏による歯科医療に対する指針罹らなくて済むはずの病気・無駄に病気になることを歯科で止める鶴見大学名誉教授/歯学博士 花田信弘4 全身を傷害する
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