大阪大学歯学部附属病院丹羽 均40【症例】その患者、本当に局所麻酔薬アレルギー?真の局所麻酔薬アレルギーの頻度は? 局所麻酔薬は歯科臨床において最も使用頻度の高い薬剤の1つであるが、局所麻酔に伴う異常反応も少なくない。局所麻酔に伴い何らかの異常反応を示した患者の多くが、詳細に診断されることなく、安易に「局所麻酔薬アレルギーである」という不正確なレッテルを貼られてしまう。このような患者の被る不利益は計り知れない。局所麻酔が必要な治療を避けたり、痛みを我慢しながら治療を受けたり、全身麻酔を選択し医療資源を浪費したり、あるいは、実際には他の物質が真の抗原であった場合、再曝露してしまう危険性さえもたらす。 局所麻酔薬は、おもに即時型(Ⅰ型)、および遅延型(Ⅳ型)アレルギーを引き起こす。即時型(Ⅰ型)アレルギーのうち、アナフィラキシーは、「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」と定義される。 歯科治療時の局所麻酔に関連した全身的偶発症に関する調査研究によると、そのほとんどが血管迷走神経反射で8〜9割を占め、その他は過換気症候群、局所麻酔薬中毒、アドレナリンによる影響であった1,2)。局所麻酔薬によるアレルギー反応はわずか1%程度で、さらに、その8割は遅延型(Ⅳ型)アレルギーであるとされている。しかし、局所麻酔薬が原因と考えられるアナフィラキシーによる死亡例も報告されており、慎重な対応が求められる(症例)。歯科でのアナフィラキシーによる死亡事故歯の治療の麻酔で死亡2002年6月、アレルギー歴のない4歳児の歯科治療時、局所麻酔薬によりアナフィラキシーショックが発生し、死亡した。局所麻酔薬注射20分後に患児の顔色の不良に気付き、救命処置を講じたが、救急病院に搬送後死亡が確認された。剖検の結果、喉頭浮腫、高度の肺うっ血、血中ヒスタミン濃度の上昇などから、歯科用局所麻酔薬製剤によるアナフィラキシーショックと診断された。ただし、歯科用局所麻酔薬製剤には、局所麻酔薬のリドカインのほか、添加物として防腐剤のメチルパラベンや抗酸化薬のチオ亜硫酸ナトリウムなどが含まれており、いずれが原因のアナフィラキシーかは確定されていない。1.局所麻酔薬による即時型(Ⅰ型)アレルギーの発生頻度は? 歯科診療で用いられた局所麻酔薬により発生する即時型(Ⅰ型)アレルギーの真の発生率を推定することは困難である。フランスの35年間(1985〜2020年)の調査では、歯科での局所麻酔薬に対するアナフィラキシーの粗発生率は、局所麻酔薬カートリッジ100万本あたり0.0261例と推測されている4)。また、デンマークにおける2010〜2014年の5年間の調査では、局所麻酔薬に対するアナフィラキシーの粗発生率は、120万人に1人未満とされている5)。歯科臨床における局所麻酔薬アレルギー3
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