明日から役立つ歯科アレルギーの世界
7/14

9③情報提供と教育:患者・家族、および学校や皮膚科領域におけるアレルギー疾患の最新知見ターや国立病院機構などの「中心拠点病院」を頂点とし、各都道府県に「拠点病院」を配置するネットワークの構築職場など社会全体での理解促進 2026年度は、2017年に策定された「アレルギー疾患対策基本指針」の定期見直しの時期にあたるが、現在のところ、47都道府県すべてにおいて「アレルギー疾患拠点病院」の整備がほぼ完了している。現在は実臨床におけるアレルギー診療の質向上が図られているところであり、それは重症化予防、地域間格差の解消、および最新の治療法(舌下免疫療法や生物学的製剤)の普及といった面である3)。 さて、これまでの行政の主導により、専門医とかかりつけ医の役割分担は明確化されつつある。しかしながら、アレルギー疾患は「アレルギー・マーチ」という概念4)が知られるように、皮膚、鼻、眼、肺など多臓器にわたって症状が連鎖・併発する特性を持っており、従来の専門医とかかりつけ医の考え方では不足である。実際、皮膚科、内科、小児科、耳鼻咽喉科、眼科、そして歯科といった各診療科間における密な連携が必要となるが、必ずしも十分に機能しているとはいえないケースも多く見受けられる。本書の主題である(歯科)金属アレルギーのように、歯科治療と皮膚症状が密接にかかわることがあり得る分野においては、医科歯科の密な情報共有が不可欠である。 皮膚科領域のアレルギー疾患における最近の動向として特筆すべきは、この10年程度で大きく進歩した病態の理解とそれに基づく新規治療法の開発、ということになる。そのなかでもとくに、アトピー性皮膚炎の病態理解と治療法の進歩についてはスペースを割いて触れることとし、他の疾患についても簡潔に触れたい。1.アトピー性皮膚炎(AD) アトピー性皮膚炎(以下、ADとする)の疾患概念としておおよそコンセンサスを得ている考え方としては、いろいろな遺伝的要因と環境要因(後天的な増悪因子)が複雑に絡み合って発症し、その症状が維持されていく慢性の炎症性皮膚疾患である、ということになる。 ADの治療を考えるときに頭に置いておくべき治療指針のあらましは、確実な根拠をもってADと診断された患者に対して、重症度にみあった適切な薬物治療を、増悪因子対策ならびにスキンケアの励行と併せて行っていく、ということである。実際の臨床の現場では、まず抗炎症外用薬(ステロイド、タクロリムスなど)を基本薬物と考える治療が行われるが、すべての患者で良好な治療効果を発揮できるとは限らず、治療に難渋する患者との遭遇は稀なことではない。そのような場合は、機械的に治療薬の変更という選択肢に飛びつく前に、治療指針の最初に戻って再検討することが必要である。すなわち、診断に間違いがないのか、重症度に見合った治療方法を選択しているのか、あるいは薬物が正しく使用されているのか、さらには見落としている増悪要因が存在してはいないか、スキンケアもしっかり行われているのか、といったことである。このように、現時点における治療行為全体の見直しを図ってもなお、良好な治療効果を得ることが難しい症例(中等症以上をキープ)においては、患者との相談のうえ、全身療法の導入を含めた、次のステップの治療を検討することになる。これらAD治療の、いわゆる「標準治療」の流れは診療ガイドラインでもしっかりと記載されている5)。 さて、ここ数年におけるADを対象とする臨床の現場においては、さまざまな変化が起こった。そのなかでも大きなものは、ADの病態形成に関する理解が深まった、ということであろう。多様性に富むADの病態形成メカニズムのなかで、ある程度すべての患者において共通するであろう因子が抽出されてきて、いくつかに集約されるようになってきた。皮膚におけるバリア機能にかかわる因子の障害と、Th2型免疫反応の亢進はそのなかでも重要と考えられる要素であり、それに加えて、ADにおける重要な自覚症状である痒みがこれら2つと連動してい

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る