明日から役立つ歯科アレルギーの世界
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 2016年にデンタルダイヤモンド社から発刊した『歯科アレルギーNOW 疾患の基礎と臨床のエッセンシャル』から10年の時を経て、歯科診療は材料と技術の進歩によって、大きく姿を変えてきました。かつては金属材料が中心であった治療は、接着技術の進歩に伴うレジンやセラミックス系材料、ジルコニアインプラントなど「歯科診療で使えるもの」が飛躍的に広がりました。同時に、コロナ禍を経て感染対策の徹底により、消毒薬や手袋・防護具など「診療環境を支えるもの」の重要性も増しています。歯科診療が患者に提供できる選択肢や可能性が大きくなった一方で、私たち医療従事者が日々向き合う“もの(物質)”の種類は増え続け、診療はより複雑になりました。この複雑さが、時に「アレルギー」という形で表面化します。 歯科とアレルギーの関係は決して新しい話題ではなく、歯科用金属と生体反応の関連は早くから国内外で議論され、診断・検査・材料選択の工夫が積み重ねられてきました。かつては包括的に使用されてきた歯科用金属から溶出する金属イオン(ニッケル、パラジウム、水銀など)が引き起こす遅延型アレルギーは、皮膚炎や口腔扁平苔癬、掌蹠膿疱症など、多彩な全身症状をもたらす要因となることがわかっています。 口腔内の金属製装置は、生涯を通して唾液と接触し、つねに腐食のリスクに晒されていますから、注意しなければなりません。しかし現代の歯科診療は、前述したように金属材料だけでは語れません。さまざまな歯科材料や薬剤、関与し得る要素が多岐にわたり、「どれが、どの病型で、どの程度関与しているのか」を整理することが難しくなっています。 本書は、こうした現場の難しさを少しでも解きほぐすために、一般歯科臨床のなかで「アレルギーに必要な基礎知識」と「臨床で次に何を診て、どのように介入すべきか」を10年ぶりに整理し、編集しました。そのなかで、本書がとくに目指したのは「医科と歯科の連携(医歯連携)」です。治療に際して、歯科と医科で情報が分断されやすい点が「アレルギー」と向き合うことを困難にしている要因の一つです。歯科と医科のアレルギーに関する知識の共有がないことは、日本では大学教育レベルにまで発展する問題ですが、臨床の現場では両方の視点で問題を診る力が必要になります。本書では、単に金属を別の素材に置き換える「治療」だけでなく、診断・検査、そして皮膚科等の他科連携までを含めた、包括的なアプローチを提案しています。 「治らない皮膚・粘膜疾患」を抱えた患者に対し、私たちがどのような姿勢で、いかに正確な情報を提供すべきか。歯科医師、歯科衛生士、そして医療に携わるすべての方の必携書として、歯科金属アレルギーだけでなく、歯科材料に対するアレルギー治療の現在を収載しました。 われわれ歯科医師のそうした思いに応え、快く編集委員を引き受けてくださった東京科学大学皮膚科 沖山奈緒子教授、獨協医科大学皮膚科 井川 健教授に謹んで、御礼を申し上げます。また、数多くのアレルギー関連の著名な先生方が、お忙しいなか執筆してくださったことに心より御礼申し上げます。 最後に、本書を手に取ってくださった先生方にお願いがあります。臨床の現場は多様であり、地域、患者層、使用材料、医科との連携体制などの違いによってその課題の現れ方も異なります。本書の記述にお気づきの点があれば、ぜひお寄せください。皆様の経験と知恵が、次の改訂や次の世代の臨床に確実に生きると信じています。本書が、患者にとってより安全で納得のいく歯科医療に繫がる一助となれば幸いです。2026月3月東京科学大学病院 義歯科(専)歯科アレルギー外来松村茉由子刊行にあたって

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