第1章 人材マネジメントの本質と課題13しかし、その疲れは決して院長先生個人の能力不足や努力不足によるものではありません。むしろ、真面目で責任感が強いからこそ生じる、歯科医院の構造的な問題そのものなのです。なぜ歯科医院では、ここまで「人」が院長を消耗させるのか。なぜ、頑張れば頑張るほど、苦しくなるのか。歯科医院の経営を分解してみると、多くの要素は「数字」で管理できます。ユニットを何台入れるか、CTを導入するかどうか、内装にどれだけ投資するか。設備投資は初期費用や回収期間を試算し、導入後の効果をある程度予測することができます。高額な投資であっても、判断基準は比較的明確です。細かい経営的な数字も同様です。ユニット回転率やレセプト枚数、客単価、保険割合、自費割合なども正しい計測ができていれば安心感につながる要素です。毎日使用する材料の費用も同様です。材料の単価や使用量を把握すれば、月間のコストは見えてきます。無駄があれば削減でき、診療内容によって最適化することも可能です。少なくとも、「なぜ材料費が増えたのか」という問いには、後から理由を説明することができます。しかし、「人」に関してはどうでしょうか。面接を行い「これはいい人材がきた!」と期待をしても採用してみるまで、実際にどのような働き方をするのかはわかりません。入職当初は意欲的だったスタッフが、数ヵ月後には不満を抱えることもあります。逆に、静かで目立たなかったスタッフが、ある日突然成長することもあります。人は数字のように扱えず、再現性が極めて低い存在です。さらに厄介なのは、「人」は感情をもち、言葉を話してコミュニケーションをとるという点です。同じ説明をしても、同じコミュニケーションをとったとしてもその受け取り方は人によって異なります。同じ評価制度を用意しても、「納得できる人」と「不満を感じる人」が必ず出てきます。設備や材料のように、「こうすればこうなる」という因果関係が成り立ちません。院長が疲れる理由は、まさにここにあります。設備投資や数字の管理であれば、努力は結果に繫がります。しかし人に関しては、どれだけ気を配っても、どれだけ丁寧に対応しても、必ずしも報われるとは限りません。それどころか、「ここまで考えているのに、なぜわかってもらえないのか」という徒労感や無力感を生みやすい領域です。頑張りすぎ院長が疲れる理由2. 歯科医院経営における最大のボトルネックは「人」
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