30巻頭特集 本邦では、これまでの8020運動に代表される歯科保健政策の成果によって、多くの国民が生涯にわたり自らの歯と口腔機能を保持できる時代となってきた。しかし、国民の口腔健康状態は大きく向上してきた一方、社会環境の変化に伴い患者が歯科医療に求める価値観は多様化しつつある。そのため、「痛みを取る」「噛めるようにする」といった機能的要求だけでなく、「美しくありたい」「健康的に見られたい」「自信をもって笑いたい」といった審美的・心理的訴求を満たすための受診も増加傾向にあるのが現状である。 この傾向はとくに若年層から中年層で強く、SNSやオンライン会議などの普及によって、自身の顔貌や口元を客観的に見る機会の急増が影響しているものと考えられる。また、写真や動画を通じた自己表現が日常化した現代では、歯の色や歯並びは単なる口腔内の問題にとどまらず、個人の印象や自己評価を左右する要素として認識されるようになっている点も特徴的である。すなわち、審美的な口元の獲得は、昨今の美容志向にとどまらず、自己実現やウェルビーイング(Well-being)の一部として捉えられているものと推察している1)。 実際に、愛知学院大学歯学部附属病院審美歯科診療部でも、「歯を白くしたい」という希望で来院した患者が、ホワイトニング後にセラミック修復治療へ移行するケースや、施術後の口腔内管理・色調メインテナンスを目的に継続的に来院するようになることも多い。そのため、ホワイトニングは単なる一回の処置として完結する治療メニューではなく、患者の口腔内への関心を高め、さらにその状態を維持したいとの訴求へと導く入口戦略として機能するようになっている。 したがって、新世代患者が有する審美意識の特徴を理解し、ホワイトニングを入口戦略としてニーズに適切に応えていくことは、今後の歯科医療における重要な戦略の一つとなり得るものと確信している。そこで本稿では、辻本暁正Akimasa TSUJIMOTO愛知学院大学歯学部 保存修復学講座 主任教授新世代患者の審美意識から考えるホワイトニング起点の治療戦略
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