デンタルダイヤモンド 2026年6月号
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36巻頭特集 高齢患者に対する全顎的咬合再構成では、欠損部を補うだけでなく、患者の全身状態や残存歯の予後、通院可能性、治療の受容性、治療期間、将来的なメインテナンス性も含めて総合的に判断する必要がある。 とくに骨格的不調和や過蓋咬合を伴う症例では、本来であれば矯正治療を含めた包括的治療が適応となることも少なくない。しかし、実臨床では高齢や全身疾患の既往、あるいは患者の治療希望により、理論上の最善策がそのまま現実的最適解になるとは限らない。 今回経験した症例は、骨格性Ⅱ級、過蓋咬合、鋏状咬合を背景に咬合崩壊が進行し、残存歯の多くが失活歯で長期予後に乏しい状態に至った高齢患者である。本症例では、矯正治療を回避しつつ、あたかも矯正治療後のような歯列・咬合関係を補綴的・外科的に再現することを目標とし、デジタル診断を基盤として補綴主導で最終歯列ポジションを設計した。 そのうえで、全身的負担を考慮した段階的外科治療、全部位抜歯即時インプラント埋入、非即時荷重、固定性プロビジョナルレストレーションによるQOL維持、カンチレバーを排除した最終補綴設計を組み合わせ、全顎的機能再建を行った。 本稿では、本症例における診断、治療戦略、補綴主導型意思決定の背景、ならびに高齢・全身疾患患者に対する全顎インプラント治療の意義について報告する。 患者は70代の男性である。「左下のブリッジが折れて噛めなくなった。義歯ではなく、しっかり噛めるようにしてほしい」を主訴に来院された(図1)。 既往歴として心筋梗塞、脳梗塞、高血圧を有し、内科的管理下にあった。日常生活は自立していたが、体力的な低下や将来的な通院継続への不安を自覚しており、治療に際して 患者背景阿部公成Kiminari ABE愛知県・こう歯科矯正歯科補綴主導で考える高齢・全身疾患患者の全顎インプラント治療

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