38巻頭特集 高齢者の健康において、「睡眠」と「歯科」の領域は密接に関連している。とくに閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、摂食嚥下障害、誤嚥、認知症といった問題は複合的に絡み合い、高齢者の生活の質に大きな影響を及ぼす。 本項では、睡眠と口腔機能が相互に影響し合い、認知機能障害や誤嚥性肺炎などのリスクを高めるメカニズムと、歯科的アプローチの役割について解説する。 OSAは加齢に伴って有病率が増加することが知られている1)。高齢者においては軽度から中等度の症例が多く、重症例は比較的少ない傾向にあるが、加齢自体が重症度に大きな影響を与えるわけではない。 一方で、OSAは循環器疾患や代謝性疾患の悪化因子となるため、高齢者の健康管理において無視できない病態である。このため、高齢者のOSAに対しては歯科的アプローチも含めた包括的な対応が求められている。 OSA患者では睡眠中の嚥下頻度が少なく、また嚥下後に呼吸が吸気で再開することが多いため、誤嚥を来しやすいと考えられている2)。さらに、重度のOSAは肺炎による入院リスクの増加と関連しており、睡眠中や無意識下の微小誤嚥が感染リスク上昇の一因とも示唆されているため、誤嚥性肺炎の発症リスクが懸念されている(図1)3)。 ただし、この「誤嚥」と「肺炎」がただちに結びつくわけではない。誤嚥性肺炎の発症は、抵抗力(喀出力、免疫力、体力)と侵襲(誤嚥物の量、内容)のバランスによって決まる。そのため、個々の症例におけるリスクは異なることを十分に考慮しなければならない。 高齢者でOSAが合併すれば、睡眠中は嚥 高齢者と睡眠歯科 高齢者と睡眠時無呼吸 睡眠時無呼吸と誤嚥性肺炎佐々生康宏Yasuhiro SASAO山口県・ささお歯科クリニック高齢者と睡眠睡眠時無呼吸、摂食嚥下障害、認知症とのかかわり
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