デンタルダイヤモンド 2025年11月号
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44巻頭特集 本年6月20日、厚生労働省(以下、厚労省)より、「歯科衛生士による浸潤麻酔の実施に向けた研修プログラム(例)令和7年度版」が発出され、注目を浴びている。本項では背景や検討委員会での議論の推移、そして研修プログラム案の目的と内容について、わかりやすく整理して解説する。 昭和40年7月1日付け(医事第48号厚生省医務課長回答において)の「麻酔行為について」では、「麻酔行為は医行為であるので医師、歯科医師、看護婦、准看護婦または歯科衛生士でない者が、医師又は歯科医師の指示の下に、業として麻酔行為の全課程に従事することは、医師法、歯科医師法、保健婦助産婦看護婦法又は歯科衛生士法に違反するものと解される。」と記されている(図1)1)。 これは日本麻酔学会会長からの照会に対する回答であり、おそらく歯科医師が全身麻酔を施行することに関しての照会であったと推察される。このなかに記載されている「麻酔行為」に局所麻酔も含まれるとするならば、局所麻酔は医行為であると考えられる。現行制度では歯科衛生士は歯科医師の「指示の下」で診療補助を行う職種だが2)、局所麻酔行為そのものは想定されていなかったと思われる3)。 実際、歯科衛生士養成課程の教育内容にも局所麻酔の「実施」は含まれておらず、器具・薬剤の準備や取り扱いを学ぶに留まっている4)。学生時の臨床実習でも浸潤麻酔は見学が中心で、学生自身が注射を行う訓練の機会はないのが現状のようである。 しかし近年、現場では約3%の歯科衛生士が浸潤麻酔を行っているとの調査報告もあり5)、民間団体等による研修・認定を経て、独自に実施する例が出てきているのが実情である。このように需要と現実のギャップが生じていることから、歯科衛生士が安全に浸潤麻酔を行えるようにするための体制整備と教育の見直しが、大きな課題となった。そこで立浪康晴Yasuharu TACHINAMI富山県・たちなみ歯科口腔外科クリニック歯科衛生士による浸潤麻酔研修プログラムの全貌厚生労働省通知(令和7年度版)を読み解く

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