デンタルダイヤモンド 2025年10月号
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33巻頭特集 「便宜抜歯」という用語は、日本歯科医学会学術用語集1)に記載があるものの、その定義は検索したかぎり明確に記載されていない。そこで本稿では、「矯正治療を目的に便宜的に行う抜歯」として定義させていただく。 本稿では、便宜抜歯の術前準備と手術手技、自由診療専門クリニックとしての対応、4本同時抜歯のコツについて述べる。1.紹介状 矯正歯科医院から便宜抜歯依頼を受ける場合、正しい情報伝達や記録を残すためにも紹介状は必要と考える。 具体的な抜歯部位の記載方法に関して、筆者はFDI方式(#14、24、35、44など)よりも、数字と十字の記号を組み合わせたZsigmondy-Palmer方式(4、4、5、4など)で書いてもらうことを推奨している。理由は、視覚的かつ瞬間的にイメージしやすいうえ、歯科医師以外のスタッフにも認知されやすく、後述する部位確認(タイムアウト)の際に有利と考えるからである。 また、転位歯や傾斜歯などで歯式の判断が難しい、あるいは誤認しやすい場合は、口腔内写真や口腔内スキャナ画像などで図示すると伝わりやすい(図1)。2.画像診断 筆者は、抜歯を希望して来院した初診患者に対し、原則としてパノラマX線写真を撮影している。パノラマX線写真では、対象歯の歯冠および歯根形態の観察に加え、「歯と顎骨の形態・構造、解剖学的構造との位置関係」(以下、前項)で示したように、対象歯周囲の顎骨の形態、上顎洞との重なり、上顎洞炎の有無、下歯槽神経およびオトガイ孔との位置関係を把握可能である。さらに、骨格や骨の硬さ、顎骨に対する相対的な歯根の長さな 便宜抜歯とは 術前準備勝見祐二Yuji KATSUMIかつみ歯科口腔外科便宜抜歯実践のポイント

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