図❶ 9歳、男児。口呼吸があり、口唇閉鎖時に口輪筋の緊張を認める(左)。口蓋の側方への成長が不十分で歯列狭窄している(右) 問題を見つけるには 異所萌出、歯胚位置異常の みつけ方と対応 48 小児期の診察で大切なのは、正常な永久歯列へと導くことである。しかし、最近の子どもたちはアレルギー疾患の増加や軟食化傾向にあり、顎骨の発達不全が多くみられる。 それに伴い、異所萌出、歯胚位置異常、萌出遅延、先天性欠如などの異常が認められることがある。2018年に口腔機能発達不全症が新病名として保険収載されたことからも、日本人の多くの子どもたちへの口腔機能の発達支援が求められている。 口腔機能発達不全症とは、子どもたちの「食べる機能」、「話す機能」、「呼吸する機能」が十分に発達していないか、正常に機能獲得できていない状態を指す。なかでも注目されているのは、口呼吸でいつも口を“ポカン”と開けている子どもたちが増加していることである。小学生の約30%が口呼吸という報告があるが1)、コロナ禍でのマスク生活で、その数はさらに増えているといわれている。 お口ポカンの子どもは、よだれが出やすい、口唇が乾燥する、口臭がする、上顎の前歯に茶色く着色しやすい、う蝕や歯肉炎に罹りやすいといった特徴がある。さらに、口呼吸でつねに舌が低位に位置することで、口蓋に舌の圧がかからず、口蓋の側方への成長が不十分で狭窄歯列弓となるケースが多く見受けられる(図1)。舌が正しく機能しないことで、異常嚥下癖などの舌癖を引き起こし、開咬や上下顎前突などの歯列咬合不正を引き起こすこともある(図2)。 口腔機能の問題は、放置される期間が長いほど改善が難しくなり、顎の発育不全や歯列不正などさまざまな問題を深刻化させ、全身の健康にも影響を及ぼす。「時期がくればいずれ治る」、「将来、改善すればよい」ではなく、成長期の問題は成長期のうちに改善することが大切であり、そのためには診療室でそれらの問題を見逃さない眼をもつことが大切となる(POINT①)。 臨床でよく遭遇する萌出位置の異常について、異所萌出(例:上顎第1大臼歯)や歯胚位置異常(例:上顎犬歯)などの早期発見のポイントや対応方法を解説する。 永久歯の萌出障害とは、萌出時期の異常、萌出方向の異常と歯胚の位置異常、さらに埋伏した状態のことを指す。発生頻度は下顎よ
元のページ ../index.html#12