デンタルダイヤモンド 2025年9月号
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27ント)が中心であった。既存骨にインプラント体を埋入し、オッセオインテグレーションを最優先させることが主流で、おもに義歯の固定や臼歯部の咀嚼機能回復を目的に使用されていた。審美修復部位である前歯部に使用されることは稀であった。2.審美修復としてのインプラント治療(1990〜2000年代)1)審美的需要の高まり 現代のインプラント治療の成功基準が確立されたとされるトロント会議が、1988年に開催された。「インプラントは、患者と歯科医師の両者が満足する機能的、審美的な上部構造をよく支持している」と、初めてインプラント修復治療に審美的な成功が言及された。これにより、前歯部に対するインプラント修復治療に、審美性が求められるようになってきた。2)GBR 1990年代に入ると、補綴主導型治療(トップダウントリートメント)が主流となった。そして、診断用ワックスアップから補綴学的に理想的な上部構造の位置や形態を決定し、最適な埋入ポジションへインプラント体を埋入するために、GBRやCTGが頻繁に行われるようになった。 2000年代には外科主導型や補綴主導型治療に加え、外科的侵襲度、治療期間、治療費など患者の要望に沿った患者主導型治療も増加。既存骨を最大限利用した低侵襲な治療が行われるようになってきた。3)補綴設計の進化 プロビジョナルレストレーション(以下、PVR)の重要性が広まり、エマージェンスプロファイルやサブジンジバルカントゥアなどの補綴形態への理解が深まった。4)ITIコンセンサスなど国際ガイドライン “抜歯即時埋入”や“即時修復”など、抜歯後のインプラント体埋入の時期分類と戦略が整備された。3.デジタル時代のインプラント審美修復(2010年〜現在) CBCTや口腔内スキャナー(以下、IOS)、CAD/CAMなどのデジタルテクノロジーが発展。加えて、ジルコニアなどマテリアルの進化により、強度的にも審美的にも精密な補綴設計が可能になってきた。 抜歯後のインプラント埋入のタイミングによって、治療期間、治療手技、そして治療結果に大きな影響を及ぼす。そのため、術前の診査が重要である。また、インプラント治療が必要な部位の感染の有無、既存骨の状況、とくに唇側歯槽骨の厚みもしくは有無や軟組織の状態など、上顎前歯部における解剖学的分析は非常に重要になる。そのうえで個々の症例に対し、抜歯後のインプラント埋入のタイミングおよび適切な術式を選択しなければならない。 抜歯からインプラント埋入までの期間を“治癒期間”といい、ITIコンセンサス会議ではTypeⅠ〜Ⅳの4つに分類される1)。図2にそれぞれの定義を示す。またその治療指針を示す2)。 この選択肢のなかでTypeⅠである抜歯即時埋入後、即時修復(プロビジョナライゼーション)を行う術式が理想と考え、日々臨床 インプラントの埋入時期

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