ることである。その結果、不正咬合や口腔機能発達不全症の発症・進行・再発を防げると考えている。また、本格的な矯正歯科治療の前処置・補助・予後管理(保定)としての役割も兼ね備えている。あくまでも、矯正歯科専門医が行う治療を主役とすれば、矯正基本治療は脇役であり、一期治療、二期治療を問わず、継続的に行える治療である。歯周治療における歯周基本治療と同様な役割と位置づけている。 矯正基本治療として現在、以下の8つの手段を状況・症例に応じて組み合わせている(前回、紹介した際は7つであったが、今回は新たに「舌はがし」を追加した)。1.既存型可撤式顎矯正装置装着(プレオルソ〔フォレスト・ワン〕:図1) 既存型可撤式顎矯正装置は、さまざまな種類がある。いずれの装置も適応症どおりに、適切に装置を装着すれば一定の効果は得られる。筆者は適応症の選択がシンプルで、良好a:タイプⅠc:タイプⅢb:タイプⅡ図❶ プレオルソ(フォレスト・ワン)(画像はメーカーより提供) 矯正基本治療とは63 これらの観点から、われわれかかりつけ歯科医は、口腔機能に関する「気づき」の感性を高くもち、周りの人々と協力して健やかな成長発育を支援する立場として診療に携わる必要がある。 「矯正基本治療」とは筆者の造語であり、過去の『月刊デンタルダイヤモンド』6, 7)に投稿しているので参照してほしい。まずは、復習を兼ねてどのようなことかを以下に簡単に解説する。 矯正基本治療は、マルチブラケットやインプラントのような高度な技術を必要とする職人技ではない。誰もがやる気と根気と興味さえあれば習得できる、患者と術者に優しい治療である。 その目的は大きく3つある。①不正咬合の原因除去、②口腔機能の獲得・維持・回復、③口腔清掃であり、これらを継続的に実践す
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