図❶a 70代女性、初診時図❶b 口蓋根長軸の断像。口蓋根に上顎洞に及ぶ病変を認めた35の臨床的応用について、症例を交えて紹介したい。 歯内療法において、的確な診断と適切な処置方針の決定は、治療の効率化に直結する重要な要素である。たとえば、歯科用コーンビームCT(CBCT)によって根尖病変の有無や広がりを把握し、診断を確定できれば、処置方針の決定を早期に行える。また、歯根破折やセメント質剝離といった鑑別診断を事前に行えれば、不要な治療を回避することにも繫がる。こうした診断の正確性を高めるうえで、CBCTやマイクロスコープといった“見える化”を可能にする機器の活用は、診療の効率化に貢献する有効な手段となる。 以下に、こうした機器を用いて処置方針の決定を行った、3つの症例を供覧したい。◉症例1:CBCTにより根尖性歯周炎を診断できた症例(図1) 70代・女性の6の症例である。主訴は咬合痛であった。デンタルX線写真ではう蝕や明確な異常は認められず、電気歯髄診ではわずかに反応を示した。マイクロスコープ下で咬合面に破折線を確認したものの、確定的な診断には至らなかった。追加でCBCTを撮影したところ、口蓋根根尖に上顎洞に及ぶ病変が明瞭に確認され、根尖性歯周炎と診断した。これにより、感染根管治療を行う方針を決定した。 本症例では、周囲骨の不透過性の影響で、デンタルX線写真では根尖の状態が判然としない状況であった。また、根管ごとに感染の及んでいる範囲が異なるため、一部の歯髄が生活反応を示していた可能性が考えられる。三次元的な画像情報が得られるCBCTにより診断が可能となり、治療方針を決定できた症例である。◉症例2:マイクロスコープ使用により微細なクラックを認めた症例(図2) 60代・男性の5の症例である。補綴再製に伴い、根管治療を行うこととなった。マイクロスコープ下でコアおよび根管充塡材の除去を行ったところ、根尖に及ぶ頬舌的な破折線を確認した。破折線は根を二分するような走行を示しており、この所見から保存は困難と判断した。このような微細な破折線は、裸眼や拡大鏡では視認が困難であったと考えられ、マイクロスコープによる可視化が診断に大きく寄与した症例である。 診断や鑑別診断における 可視化の重要性
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