a:70代、女性の下顎骨CT画像。皮質骨は薄く、内部の海綿骨は疎である図❶ インプラント埋入部位の骨の状態は年齢、性別など、さまざまな要因に左右されるb:50代、女性の下顎骨CT画像。皮質骨は厚く、内部の海綿骨は密である ISQ値(インプラント安定指数) と治療プロトコル58 半世紀以上前にスウェーデンのPhysician Per-Inger Brånemark教授(以下:ブローネマルク)が、チタンが骨と結合(Osseo-integration)する特異な現象に着目し、動物などを用いた長年の基礎研究より骨結合型のチタン製インプラントを歯科用に開発した。そして1965年に、当時34歳だった患者の下顎骨に初めて臨床応用し、スウェーデン国内での承認など数々の苦難を乗り越えて現代歯科インプラントが誕生したことは、周知の事実である。 歯科インプラントの成否はOsseo-integrationの獲得とその維持であり、異議を唱える臨床家はいないと思う。しかし、現在実用化されているインプラント体の種類は多岐にわたり、Osseointegrationに至る経過やその後の変化もさまざまである。また、Osseointegrationを得るために重要な初期固定は、インプラント埋入部位の周囲骨の状態にも大きく左右される(図1)。さまざまな要因が関係することから、このOsseo-integrationの評価・経時的な観察はいまだ十分になされていない。 われわれ臨床家が知りたい本音は患者ごと、埋入したインプラント体ごとに異なるOsseointegrationがインプラント治療の各段階において、どのような経過を辿っているのかを簡便に評価できる客観的な指標である。 そこで登場したのがISQ(Implant Stability Quotient:インプラント安定指数)値の測定である。ISQ値の測定は客観的な評価であること、経時的に評価を行えること、非侵襲的である点で注目されている。 本特集では、ISQ値の測定方法やISQ値の部位および時間経過による変化、ISQ値に影響を与える要素を、具体的な臨床での応用を含めて紹介する。 RFA(共鳴振動周波数分析装置)を用いて測定する。専用の振動変換器をインプラント体に装着し、磁気パルスを照射することで固有振動数を測定する。得られた固有振動数の2乗が周囲との結合の強さに比例することを応用し、インプラント体の骨内での安定性を評価する方法である(図2)。 頰舌側(以下、BL)、近遠心側(以下、MD)の2方向で測定を行い、1~100の数値で示され、この数値が高いほどインプラント体の骨内での安定性が高いとされている。簡便な操作で客観的な数値を非侵襲的に得られる点で優れており、これまでのISQ値に関する過去の報告1~4)からISQ値に応じた治療プロトコルが推奨されている(図3)。 当科では一次手術時、二次手術時、上部構
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