デンタルダイヤモンド 2025年5月号
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図❶ 現在のIOSは、患者の口腔内の情報をカラーで簡便に取得できる32 近年、歯科医療におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進んでいる。デジタル技術の導入により、診療の効率化や精度向上だけではなく、患者体験の向上やスタッフの負担軽減にも大きく貢献している。なかでも口腔内スキャナー(以下、IOS)は、歯科診療の新たな可能性を切り開く画期的なツールとして注目されている。 従来の診療では、視覚的な説明が難しく、患者が自分の口腔状態を正確に理解するのは容易ではなかった。しかし、IOSを用いることで、患者は自分の口腔内を3D画像として可視化し、直感的に理解できるようになる(図1)。これにより、治療や予防の重要性を深く認識し、積極的にケアに取り組むきっかけが得られる。 さらに、IOSの活用は診療の効率化にも大きく貢献する。従来のアルジネート印象採得に比べ、短時間で正確なスキャンが可能となり、患者の負担が軽減される。また、取得したデータを補綴治療や矯正治療のみならず、予防歯科やメインテナンスにも活用することで、診療の質を高められる。 加えて、2024年の歯科診療報酬改定では、IOSを用いた光学印象採得が保険算定の対象となり、より多くの歯科医院でデジタル技術を活用できる環境が整った。これにより、これまで自費診療が中心だったデジタル技術を保険診療内でも利用できるようになり、多くの患者にとってより身近な選択肢となった。 本特集では、予防歯科の分野でいかにIOSを効果的に活用できるかをテーマに、具体的な選び方から導入のポイント、歯科衛生士による活用法、患者説明への応用、院内DXの推進方法について解説する。また、臨床例を通じて、実際の診療現場での成果も紹介する。さらに、当院で導入しているIOSを用いた歯科衛生士による効果的なマネジメントであるSheMシステム®の運用方法についても触れ、スタッフ全員が効率的にスキャンを行い、データを一元管理しながらスムーズな診療を実現する方法も紹介する。 本特集を通じて、IOSがもたらす新しい歯科医療の可能性を共有し、未来の診療のヒントとしてほしい。 IOSの選定は、診療の質や患者満足度に直結する重要な要素である。選定時に重視すべきポイントを以下に整理する。1.スピード IOSのスキャンスピードは診療効率に大きな影響を与える。とくに、保険診療でIOSを活用する場合、スキャンに時間がかかると IOSがもたらす 新しい歯科医療の可能性 IOSの選び方

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