デンタルダイヤモンド 2025年4月号
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図❶ 大講義室でのセミナーの様子図❷ Greggory Kinzer先生と34 読者の皆様も、日常臨床でさまざまな症例に向き合っておられることと思う。時に何を基準にどのような選択肢を選び進めていくべきかわからなくなることがあり、診断に苦慮し、治療に行き詰まりを感じる場面も少なくないのではないだろうか。 筆者は2016年に診断と治療計画の世界的権威であるFrank Spear先生の「The Art of Treatment Planning」というセミナーを受講し、EFSB(Esthetics、Function、Struc-ture、Biology)を学び、たいへん感銘を受けた(図1、2)。EFSBを治療に落とし込むことで、それまで難解だと感じていた症例も、以前に比べてスムーズに治療できるようになった。 一方で、問題が複雑に絡み合った症例においては、自身にとって頭の整理が追いつかないことがあるのも事実だ。そうした難解な症例に対し、筆者は自身が提唱する“3Kコンセプト”を用いることで、単純化・可視化を図っている。また、それによりスタッフ・患者と治療目標を共有できるようになったので、症例を交えて解説する。 当院では、多くの患者が審美領域の問題を主訴として来院する。こうした症例では、患者自身が長年悩んでいるケースが多いと感じる。 デリケートなエリアであるため、慎重な対応が必要となる場合が少なくない。したがって、患者と歯科技工士も含め、綿密なコミュニケーションをとりながら治療を進めていく必要性があると考える。 とりわけ、顔貌に基づく上顎中切歯のインサイザルエッジポジションを決定することの重要性について、筆者はSpear Educationで開催されているFGTP(Facially Generated Treatment Planning)コースに参加することで深く学んできた。1.補綴形態と歯頸ラインの考慮
 患者は30代、女性。暫間補綴装置の形態の違和感を主訴に来院した(図3〜5)。上顎前歯以外は機能時に異常を認めず、咀嚼筋や顎関節などにも異常所見はみられなかったため、生理的咬合と判断し、局所での対応が可能と考えた(図6)。 唇側歯槽骨の維持を目的としたルートメンEFSBとの出逢い一般的な診断の症例

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