MI根管治療に必要な器具と器材54 歯内療法では、マイクロスコープやCBCT(歯科用コーンビームCT)、NiTiファイル、MTAなどが一般開業医にも広く普及している。近年、これらに加えてさまざまな器材や技術が進化し続けており、それらを組み合わせることで低侵襲(Minimal Intervention:MI)の根管治療が可能になっている。とくに臼歯部の治療においては、修復後の咬合圧に耐え得る十分な歯質を温存できるメリットがある。 しかし、すべての症例に低侵襲であることが最適というわけではない。MIを意識しつつ、根管の形態や根管内の感染の程度に応じて適切な根管形成量を見極める必要がある。 本特集では、MIを考慮した根管治療のポイントについて、とくに臼歯部に焦点を当てて解説する。 従来の方法では、エンド三角を十分に除去し、ストレートラインアクセスを形成したうえで、根管を大きく拡大する必要があった。これは、ファイル破折の防止や根尖部までの洗浄効果を高めるためであり、さらにはガッタパーチャ主体の根管充填を緊密に行うためである。 しかし、近年の器具や器材は、根管治療におけるアクセスキャビティー形成、根管口の明示、根管拡大・形成、根管洗浄、根管充填の各ステップに大きな変化をもたらしている。その結果、必要な根管口の明示の程度や最終拡大号数が以前より小さくても、適切な根管充填が可能な場合がある。 まずは、各ステップに寄与するこれらの器具や器材を簡単に紹介する。1.CBCT X線診査においては、可能なかぎり鮮明で規格性のあるデンタルX線写真を用いることが大原則である。しかし、臼歯部では骨の厚みや上顎洞、根の重なりなどの影響で読影が困難になる場合がある。パーフォレーションの位置や根管の有無、根尖病変の広がりなどは、CBCTを使用しなければ正確に把握できないことが多い。 また、最近ではCBCTデータに口腔内スキャナーで得られたデータを組み合わせ、AR(Augmented Reality:拡張現実)技術を用いて根管形態を把握することが可能になっている。現在のところ、この技術は歯質の過剰な削合の回避や石灰化根管の探索に有用であると考えられるが、今後、さらに多様な利用法が広まることが期待される(図1)。2.マイクロスコープ 歯内療法におけるマイクロスコープの有用性は広く認知されているとおり、小さなアクセスキャビティーから根管内を観察するためには、ラバーダム防湿とマイクロスコープ下での処置が必須である。また、マイクロスコープ用の各種インスツルメントは、狭い領域での精密な処置に有効である(図2)。3.NiTiファイル 従来のオーステナイト相のNiTiファイルと比較して、マルテンサイト相のNiTiファイルは柔軟性に優れ、破折抵抗性も向上している。そのため、従来よりもエンド三角の除去を少なくした根管口明示でも、根管に追従した形成が可能である。 また、NiTiファイルを装着するエンド用
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