デンタルダイヤモンド 2025年2月号
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a:限界運動(Border movement of mandibular)図⓲ 限界運動(側方滑走運動)と咀嚼運動の違いb:咀嚼運動(Masticatory Movement)1)6自由度顎運動測定の必要性(動的な状態の評価の標準化と可視化)41 顎運動の測定法にはさまざまな方法があり、ノギスを用いて開口量を測定する場合は1自由度となる(図19)。また、ゴシックアーチ描記法は描記板における前後・左右の、ミニレコーダは上下・前後の2自由度測定である(図20)。 これらの測定法から得られる情報も重要であることには間違いないが、顎運動は最も複雑な運動である6自由度運動であり、顎運動からより多くの情報を得るためには6自由度測定を行う必要がある。6自由度(Point参照)で顎運動測定を行うことで、測定点以外の歯列上の点や下顎頭部など任意点の運動解析の他、歯列および上下顎骨の三次元形状データと同一座標系での統合(顎機能可視化技術、後述)を実現できる。2)顎機能可視化技術 患者個々の咀嚼運動時における下顎頭の動態や動的な咬合接触像を観察する手段として、坂東らはデジタルデンティストリーが一般的となるはるか以前の1980〜1990年代に、6自由度顎運動測定器と三次元形状測定器を用い走運動時とは異なる上下顎間関係と咬合接触が発現していることがわかる。 われわれが咬合器上で再現できる限界運動と咀嚼などの機能運動は、まったく質の異なる運動といえる。つまり、生体で機能できる補綴物を製作するためには、限界運動に加えて咀嚼運動など、機能時の顎運動も観察・評価する必要がある。 デジタルデンティストリー時代のいま、CAD/CAMシステムを用いて個々の患者の形態情報や顎運動情報をモニター上で再現できれば、患者にとって安心・安全な補綴物の製作に繫がることは容易に想像できる。そのためには、生体の形態と顎運動を正確に測定し、デジタル咬合器で正確に再現する必要がある。2.デジタルデンティストリー時代に必要な顎機能診断の条件 デジタル咬合器で患者個々の形態と機能を正確に再現するためには、顎口腔領域の形態に加えて顎運動のデジタル化技術(顎運動測定器、IOS、CBCTなど)と、得られた形態と顎運動データを統合する技術が必要である。

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