デンタルダイヤモンド 2025年1月号
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48巻頭特集 筆者が矯正治療を始めたのは、いまから遡ること24年前になる。大学卒業時に進路を決める際、いずれ地元である秋田で開業することを決めていた筆者は、将来クリニックを展開するうえでの強みとして、口腔外科と歯列矯正に注目した。そこで、秋田大学医学部附属病院口腔外科に入局し、高橋 哲先生指導のもと、口腔外科について多くのことを学ばせていただいた。 在籍当時は外科矯正手術を必要とする患者も多く、矯正専門医の先生方と頻繁にカンファレンスを重ね、自分でもセファロ分析などの資料作りやシミュレーションを行っていた。そうした背景もあり、さらに矯正治療に興味が向いたのもこのころである。 退局後は5年間、大きな法人歯科医院に身を置いた。その間、口腔外科時代にお世話になった矯正専門医の先生に、夜な夜なMTM(Minor Tooth Movement)をご指導いただいた。これが縁で一般診療をする傍ら、少しずつ歯列矯正の研鑽を積み、現在に至っている。 始めた当初はスキルの問題もあり、歯並びのための矯正治療というよりは、本稿で提示するアップライト症例や補綴のためのレベリング、エクストルージョンのような補綴前処置や咬合のためのMTMをメインで行っていた。 初期の症例を図1に示す。患者は37歳、男性。対象部位である7の歯冠崩壊後、長期間放置したことにより8が近心傾斜し、早期接触している。本人の希望として、できるだけ歯は削らず8はアップライト、7抜歯後の欠損部はインプラントで対応してほしいとのことだった。 近心傾斜も比較的強く、インプラント治療も控えていたため、アップライティングスプリングを選択し、短期間でのアップライトとインプラント治療を行った。 MTMはプチ矯正と思われがちだが、この 初期の矯正治療佐藤洋司Youji SATOH秋田県・さとうデンタルクリニックGPが行う矯正治療の臨床進化

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