マンガで学ぶ シニア患者さんに寄り添う対応ガイド
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10年来受診している患者さん。今年で83歳になった。ヘルパーさんの助けも受けながら一人暮らしをしている。本人の希望により積極的な歯科治療は行わず、メインテナンスに通ってもらっている。患者の久蔵さん78第1章 歯科医院編院長 久蔵さん、この写真を見てもらうと歯の根が割れていて周りに炎症があります。久蔵さんの持病に対してもいまの状態はよくないですから、今回ばかりは、抜歯も含めた大がかりな治療が必要になりそうです。抜いた歯を補うため、その後はブリッジか入れ歯のどちらかの治療をしたほうがよいですねぇ。久蔵 ……そんなにまずいのかい。あやこ (そうか、久蔵さんは糖尿病と心臓の持病があったんだ。その治療のためにいくつかお薬も飲んでいたっけ。久蔵さんは以前から歯を抜きたくないと言っていたけれど、今回はこのままじゃよくないな。もう年だ、っていつも言ってるし、治療したいと思ってくださるかなぁ)院長 いままで抜かないように頑張ってきましたけど、今回は厳しいですね……。僕としては、よくないところはすっきり取ってしまって、嚙めるようにしたほう 久蔵さんは8020達成者です。口腔内の多くの歯に治療が施されています。いくつか心配なところもありますが、「なるべく歯は抜きたくないし、これ以上治療せずに、このまま墓に入りたい」とおっしゃって、メインテナンスに通っています。 しかし、この日の久蔵さんは「数日前から奥歯が痛くて、ものが嚙めない」といって急患で受診されました。X線写真を撮ったところ、根の破折が確認されました。今回に限っては、抜歯とその後の治療計画を立てなければなりません。CASE 09CASE 09黙り込んでしまった久蔵さんその人らしく、納得した意思決定とは決められないの? 考えがまとまらないの? 

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