060東京都・東京歯内クリニック田中利典歯の変色 1998年にProRoot MTA(Dentsply Tulsa Dental)が米国で発売されてから約30年が経過した。日本では2007年よりプロルートMTA(デンツプライシロナ)として導入され、こちらも約20年が経過している。その間に、多くの基礎研究や臨床報告が蓄積され、MTAの特徴や性質に関する理解は大きく進展してきた。近年ではバイオセラミックス材料、あるいはケイ酸カルシウム系材料(カルシウムシリケート系材料)など、多様な名称で呼ばれるようになり、関連製品も多岐にわたっている。本稿は紙面の都合上、水和反応により硬化するセメントに限定してMTAとして扱い、まとめることとする。 2026年現在、日本国内で販売されているMTA製品(水和反応で硬化)を表1にまとめる。これらの使用に関して、臨床的観点から、歯の変色の原因・対策・対応、湿綿球使用の是非、ならびにMTAを用いた治療の成功率に関する文献について概説する。 MTAの使用における注意点として、歯の変色が挙げられる1~3)。変色のメカニズムにはまだ不明な点があるものの、構成成分、血液の混入、特定の洗浄液への曝露や混合、低酸素環境下での光曝露、および蛍光灯などの光源への曝露が関与すると考えられている4)。 構成成分の観点では、酸化ビスマスがおもな原因であることが知られている5~8)。酸化ビスマスはX線造影性付与を目的として添加されるが、その濃度を高めても変色の程度に有意差は認められなかったと報告されている9)。こうした背景から、近年ではジルコニアや酸化タンタル、タングステン酸カルシウムなどを造影材としたビスマスフリーのMTAが開発・市販されている。 血液による汚染も変色の一因である10,11)。とくにポルトランドセメントを主成分とするMTAでは、材料の多孔性が関与すると考えられている。血液中のヘモグロビン由来のヘムの吸収により変色が生じるとの仮説も提唱されているが、その機序は十分に解明されていない12)。 また、洗浄液の種類も酸化ビスマスによる変色に影響を及ぼす因子である13)。とりわけ、次亜塩素酸ナトリウム溶液が根管の象牙細管内に残存した場合、変色を惹起することが報告されている14)。これは、次亜塩素酸ナトリウムが酸化ビスマスの酸化状態に影響を与え、さらに二酸化炭素との反応により炭酸ビスマスを形成し、光感受性が高まることで変色が生じるとする機序で説明されている15,16)。 さらに、低酸素環境下で光に曝露されると、酸化ビスマスを含有するMTAでは黒色沈殿の形成が生じる可能性がある15)。加えて、蛍光灯、光照射器、紫外線などの光源が変色を促進することも報告されている6,17)。 以上より、前歯部や審美領域の歯冠側にMTAを使用する際には、十分な配慮が必要である。 歯の変色に対するおもな対策として、以下が挙げられる。•ビスマスフリーのMTAを選択する。• 血液混入を防ぐため、術野の適切な洗浄および乾燥を徹底する。• 根管洗浄後には生理食塩液などで十分に洗い流し、次亜塩素酸ナトリウムの残留を防止する。• 窩洞内(あるいは髄室内)の象牙質に対し、ボ最新のMTA活用術 MTAの知見をアップデート09
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