4 「義歯の動揺」の抑制※ 日本語で把持というと、grip、hold(把握)という意味合いが強いが、一般的に歯科ではbracing(突っ張り、支柱)という意味で使うことが多い。外側性把持、内側性把持という言葉は、補綴専門用語にはないが、適当な言葉がないため、本書では外側性把持、内側性把持という言葉を使った。図❷ 歯根は頰舌面で幅が狭く、近遠心面で幅が広いため、頰舌的な動きに弱い図❸ 外側性把持と内側性把持で義歯の動きを抑える図❹ コーヌステレスコープの外側性把持は高い支持効果を兼ねている外側性把持図❺ 確実な把持を得るためには肩部で歯面を180°以上囲う必要がある図❻ 中間欠損側の対抗する歯や左右側の対抗する口蓋側面で内側性把持が得られる内側性把持27の動きに注意しなければならない。つまり、歯列内で把持効果が得られるかどうかが、義歯の動揺を最小化する重要な鍵になる。直接支台装置を頰舌的に回転させないように設計する必要がある。 支持効果は、おもに欠損に隣接する直接支台装置と義歯床が義歯の沈下に対応するように、また維持効果は把持や支持だけでは足りない離脱力(食品による離脱力は5N程度とされている30))に対応するように設計するとよい32)。 把持効果には2つの様式がある37,38)。一つは周りから把持する外側性把持であり、もう一つは内側から支える内側性把持である(図3)。 図4は、リジッドサポートの代表であるコーヌステレスコープデンチャーの模式図である。最適な維持力を5〜10Nとしたときに、コーヌス角は6°程度とされている30)。その際、内冠外側面と外冠内側面で維持力が発揮され、天井部は接触していない。つまり、歯面を剛性のある外冠が囲うことによって、歯の側面で強力な把持効果と支持効果が得られる。これは究極の外側性把持といってもよいだろう。エーカースクラスプのように開放端のある支台装置では、サベイライン上の把持鉤腕は歯面を少なくとも180°より大きく囲うほうがよい(図5)。 突っ張り棒は内側から面で支えることによって外力に対して起こる回転力に抵抗する働きがある。同様に図6に示すように、歯列内や歯列外で歯面同士が支え合うことによって、義歯に生ずる回転は抑えられる。これを内側性把持と呼ぶ。内側性把持は強固な連結強度によって発揮されるものであり、効果的な内側性把持を得るためには同時に連結強度も考慮しなければならない。Pattern 13, 14, 15Pattern 15外側性把持と内側性把持で義歯を安定させる
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