4「義歯の動揺」の抑制垂直性遠心回転(浮上)垂直性遠心回転(沈下)遠心移動図❶ パーシャルデンチャーの動き水平性遠心回転頰舌回転 義歯床が動くと、残存歯や顎堤に少なからず負担がかかることは間違いない。機能時の義歯の安定を最大限に確保するためには、義歯床の動きをできるだけ抑える必要がある。支台歯の過重負担を軽減し、顎堤の吸収を起こしにくくするための設計は過去に数多く試みられてきたが、義歯全体の動きをできるだけ少なくすることが良好な予後に繫がっていることは間違いない31,32)。 義歯床の動きには、水平移動、近遠心移動、頰舌移動の3つの移動と、水平性遠心回転、垂直性遠心回転、頰舌回転の3つの回転が起こり得る33,34)。そのなかで、移動はおもに直接支台装置で制御できる動きであるが、遠心移動は注意が必要である。 一方、回転運動は歯列全体で制御される動きであり、パーシャルデンチャーの設計を考える際には、垂直性遠心回転、頰舌回転、水平性遠心回転をどのように抑えるかを考える33,34)。したがって、義歯を設計する際には、この4つの動きに注意して設計するとよい35)(図1)。 遠心移動や頰舌回転、水平性遠心回転は、歯列全体での把持要素によって動きを小さくすることができる。また、垂直性遠心回転の浮き上がりに26対しては維持要素によって、沈下に対しては支持要素によって動きを小さくすることができる。 前歯であれ、大臼歯であれ、上顎であれ、下顎であれ、歯根は近遠心面で幅が広く、頰舌面で幅が狭いので、頰舌的に揺すると脱臼しやすい(図2)。抜歯をする際は、頰舌的あるいは水平的に回転させて抜くことになる。つまり、歯にとって障害となる動きは近遠心的な動きよりも、むしろ頰舌的な回転や水平的な回転ということになる。 遊離端義歯における矢状面での説明から、遠心レストの為害性について語られることが多いが、近心レストと遠心レストの床の傾斜回転角の差はわずか1.5°弱との報告もある36)。それよりも、義歯が装着されたときの頰舌回転や水平性遠心回転4つの動きを抑えるPattern 13Pattern 14直接支台装置を頰舌回転させない
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