aadd図❶ 初診時の口腔内写真bbeecc88 先に述べたようにこの章で提示している設計パタンはすべての欠損を示しているわけではない。また、実際の臨床では、支台歯の状態や対合接触関係、咬合平面の状態、その他さまざまな因子が設計に影響を及ぼす。この項では、治療方針を考える際のアプローチ手順を解説する。 設計を考えるうえで大切なのは、医療面接や問診、口腔内検査、X線検査等において状況を把握し、問題点をあきらかにできるかどうかである。そして、その問題点に対して解決策を見つけられるかどうかである。 臨床経験が少ない歯科医師と経験豊富な歯科医師の違いは、失敗経験の蓄積にある。経験のなかで、さまざまな問題に直面し、その問題への対応策が身についている。経験豊富な先生の治療から得られる知識やアドバイスは非常に貴重である。私自身もまだまだ引き出しが足りない部分があるので、いろいろなケース、問題があったケースにどのように対応したのかを学ぶことは日々大切だと感じている。本項では、実際の臨床症例をとおして、設計パタンの利用を解説する。 患者は59歳の男性で、右上の犬歯が歯根破折し、他院で抜歯しなければならないと言われて来院された。嚙むと痛い等の症状はない。もともと3はブリッジの支台歯であり、破折してしまったため、前医では「前歯ブリッジを外して破折歯を抜歯し、前歯を含めた義歯になる」と言われたとのことである。「抜歯しないでなんとかならないか」とのことであったが、この犬歯に関しては当院でも抜歯せざるを得ない状況であることは説明した。また、服薬既往はなく、全身的な疾患もない。症例の概要臨床症例からみる設計の実践
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