ていえるポイントを提示する。①挿入軸を意識して形成する。② マテリアルスペースが多ければ多いほど、歯科技工士サイドは色調形態を付与するための自由度が上がり、単体としての強度も上昇するため、装着難易度は下がる。③接着に依存する手法であるため、接着に有利なエナメル質を温存したい。したがって、最小限の形成量を意識する。 ②と③は矛盾しているが、ここのバランスを保ちながら形成することが求められる。具体的な形成形態は、症例内で詳述する。表❶ ラミネートベニア治療の基本的な流れ1.診断と治療計画、ワックスアップ2.初期治療3.モックアップ(必要があれば)4.形成5.印象採得6.プロビジョナルレストレーションの装着7.ラミネートベニア作製8.試適と接着9.最終調整・研磨 ラミネートベニアは、1928年にアメリカの歯科医Charles Pincusが、ハリウッド俳優の審美的な要求に応えるために考案したのが始まりである。当時はアクリル製の薄いカバーを一時的に装着するもので、接着力が弱く、短時間の使用に限られていた。その後、1955年にBuonocoreが酸エッチング法を発見し、エナメル質とレジンとの強固な接着が可能となる。この技術を基盤に、1970年代にはコンポジットレジンを用いた直接法のベニアが登場し、臨床応用が始まった。 1980年代にはCalamiaらがセラミックベニアを酸処理とレジンセメントで接着する方法を確立し、より高い審美性と耐久性を実現した。1990年代以降は材料や接着技術の進化に加え、CAD/CAMなどのデジタル技術の導入により、より精密かつ効率的な治療が可能となった。近年ではノンプレップベニアなど低侵襲なアプローチも登場し、ラミネートベニアは現代審美歯科において欠かせない治療法として確立されている(表1)。ラミネートベニアの形成デザイン 「多岐にわたる」が筆者の答えとなる。歯は必ずしも正しいポジションに整列しているわけではなく、破折が生じている、あるいは理想的なポジションに支台歯となる歯が位置していないことのほうが多い。そのため、すべてのケースに共通し56ラミネートベニアの歴史荻原太郎Taro OGIWARA東京都・グランドメゾンデンタルクリニック 日本臨床歯科学会症例11.患者情報 患者は20代、女性。21を壁にぶつけてしまい、歯冠破折で来院。審美的改善を希望した。なお、日常臨床における ラミネートベニアの応用
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