開業医が知っておきたい 審美歯科実践ガイド
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の本質審美歯科の基礎概念患者の価値■理想像■自己肯定感統合技術■診断■設計■材料その人らしく笑える口元図❶ 患者の価値観をふまえ、さまざまな知識と技術を総動員して、その人らしく笑える口元を実現することが審美歯科の本質である術者の力■理想像■自己肯定感審美歯科機能との両立■■合■歯肉■再治療リスクる。このような特徴から、患者ニーズ(目立たない・自然・長持ち)を高水準で満たし得る。とくに前歯部の審美修復では、透過性や光の反射をコントロールする歯科技工士の技量も重要で、歯科技工所との綿密な連携体制が求められる。4.ダイレクトボンディング とくに若年者の空隙閉鎖や歯冠形成不全、失活歯の審美的補修などでは、歯質を最大限に温存しながら自然な審美性を回復でき、将来の治療選択肢に対する柔軟性を残しやすいといえる。 近年では、マルチレイヤー充塡向けのコンポジットレジンや、ナノハイブリッドタイプの高性能材料が登場し、色調再現性や研磨性、耐久性でも格段の進歩を遂げている。エナメル層と象牙質層を分けて積層することで、自然なグラデーションと奥行き感を表現する技術が、日常的に応用可能になった。一方で、術者依存性が高く、経年的な変色や摩耗を防ぐためには、定期的なリタッチや研磨などのメインテナンスについて患者に理解してもらう必要がある。5.アライナー矯正 ホワイトニングや補綴と組み合わせる包括的な審美治療の一環として、アライナー矯正が重要な役割を果たす場面が増えている。また、部分矯正やワイヤー矯正後の微調整にも適している。 アライナー矯正は、単なる“目立たない矯正”ではなく、審美歯科治療を機能的にも支える重要なステップとなりつつあるといえるが、一方で患者協力度が治療の成否を左右する面もある。限界を踏まえ、他手法との併用設計が必要な場合もあることを忘れてはならない。1.色彩調和:“顔貌全体”との調和を考える 審美補綴で、“色”は最も患者からの関心が高い要素である。だがその実、色の評価は術者にとっ9審美性を構成する3つの視点1.ホワイトニング ホワイトニングは包括的審美治療の入口である。とくにSNSや“動画映え”への意識が高まった近年、歯の“白さ”に対する要求は年齢・性別を問わず高まっている。 前処置としての活用は、治療全体の印象を底上げする。“白くすること”自体が目的なのではなく、口元全体の印象を改善する“きっかけ”としての位置づけが重要であると考える。2.ラミネートベニア ラミネートベニアは、低侵襲に前歯部の印象を整える方法である。エナメル質の範囲に限定して切削するため、象牙質に到達せずに高い接着力を得ることが可能であり、歯質保存の観点からも非常に優れている。ただし適応は限定的であり、咬合の評価が不可欠である。また、歯冠形態や歯肉の対称性が崩れている症例では、ラミネートベニア単独での対応には限界がある。 ラミネートベニアは最も繊細な補綴であると同時に、最もダイレクトに患者の笑顔を変える力をもつ治療法でもある。3.オールセラミッククラウン オールセラミッククラウンは汎用性の高い補綴選択である。とくにジルコニアや二ケイ酸リチウムなどの材料は、天然歯に近い審美性と高い強度を両立しており、審美補綴の中核をなす存在であ

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