開業医が知っておきたい 審美歯科実践ガイド
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2025年9月西山デンタルオフィス/日本臨床歯科学会西山英史 美しさとは何か─。 その定義は時代とともに移ろい、「審美歯科」は単なる修復治療の域を超え、人の感情や自己表現、そして人生に深くかかわる医療分野へと進化しつつある。今日では、年代や性別を問わず「自然に笑える口元」への関心が高まり、口元の審美はもはや特別な要望ではなく、日常に根ざした必然的なニーズとなっている。 口元の変化が人生の風景を変える─私たちはその臨床の最前線に立っている。 本増刊号は、そうした現代背景に応えるべく、審美歯科の全体像と各分野の実践的知識を体系的に整理し、審美歯科の本質に迫ることを目的として編纂された。 審美歯科とは、単なる「白さ」や「整い」ではない。それは機能との調和を基盤に、確かな構造の上に成り立ち、感情を繫ぎ、患者一人ひとりの“らしさ”を引き出す、繊細かつ精緻な技術体系である。 この実践には、的確な診断力・優れた治療計画立案能力・高度な技術力といったスキルに加え、深い共感力と倫理観、そして患者に寄り添い、ともにゴールを描くための「人間力」が欠かせない。いかにデジタル技術やマテリアルが進歩しようとも、それを活かして最適解を選び取るのは、術者の臨床判断に他ならない。 本増刊号では、審美歯科の基礎概念から具体的手技、材料選定、デジタルの応用までを網羅した。また、臨床のリアリティと理論的裏づけの両面を重視したうえで、症例に応じた最適な手法や考え方を提示した。臨床現場で直面するさまざまな課題と向き合うための実践的な知識が凝縮されており、あらゆるパートにおいて学びの深い内容となっている。 執筆陣には、審美歯科をはじめ、各分野において卓越した知見と優れた臨床実績をもつ歯科医師諸氏を迎え、実践的で確かな内容を志向した。 本書が、審美歯科に携わるすべての臨床家にとって新たな思索と実践の起点となり、読者各位の診療に確固たる“審美の軸”をもたらすことを心より願う。そして何より、「口元から人生が変わる」─その感動を、より多くの患者と共有する一助となれば、編者としてこれに勝る喜びはない。刊行にあたって

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