開業医が知っておきたい 審美歯科実践ガイド
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aa図❶ 57歳、女性の初診時。a:上顎前歯部正面観、b:咬合面観bb 歯科用実体顕微鏡(以下、マイクロスコープ)が一般歯科臨床に応用されてから、四半世紀以上の年月が経った。日本におけるマイクロスコープの普及率は世界と比較しても群を抜いており、歯内療法を始めとし、多くの分野で利用されている。治療対象が極小になりやすい歯科治療に対して、高倍率の明視野にて処置を行うことは、術者と患者双方に多大なメリットを与えている。 歯周治療においても、従来の歯周外科治療からペリオドンタルマイクロサージェリーへと変化し、歯周組織再生療法や根面被覆術、歯間乳頭再建術などの手術をより低侵襲でより繊細に行うことにより、術後疼痛を極力減らして治癒を早めつつ、高い審美性を実現できるなど、審美歯科治療において大きな貢献を期待できるようになった。 しかし、ペリオドンタルマイクロサージェリーは、ただマイクロスコープを使用して外科処置を行うことではない。低侵襲なフラップデザインの設定や適切な器具の理解など、独自の知識が必要で、手技もより繊細になりやすい。 そこで本稿では、結合組織移植を用いた歯槽堤増大術を例に、筆者がペリオドンタルマイクロサージェリーを行う際に配慮しているポイントを紹介する。 患者は57歳、女性。2年前に歯根嚢胞を理由に他院にて1を抜歯し、部分義歯を作製した。調整と再製を繰り返したが、満足のいく義歯ができなかったため、他の手段による前歯部欠損の回復を求めて当院に来院した(図1)。 コンサルテーションの結果、患者はブリッジによる回復を希望し、審美性の回復と食片圧入の防止を目的に、欠損部に対して歯槽堤増大術を行うことの同意を得た。診査・診断1.欠損歯槽堤の評価 まず、欠損歯槽堤の評価を行う。本来であれば、前歯部審美修復においてPink Estheticと呼ばれ92ペリオドンタルマイクロサージェリーの重要性患者概要山本賢Ken YAMAMOTO埼玉県・やまもとデンタルオフィスふじみ野 日本臨床歯科学会結合組織移植を用いた 歯槽堤増大術

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