10時間でわかる歯科経営学
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 VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)時代といわれて10年近くになりますが、どこか他人事だったと思います。しかしながら、新型コロナウイルス感染症への対応は、まさに不確実で複雑な意思決定を、曖昧な情報のなかで変化を強いられた体験だったのではないでしょうか。 また、少子高齢化が避けられないなか、医療や介護保険の変化や採用市場の難しさ、過疎化の進む地域での持続可能な医療、それらの解決策としてデジタル化やAIといったテクノロジーの活用など、歯科医院経営における難度もますます高まっています。 この変化を臨床にたとえると、いままでは単純なう蝕治療と軽度の慢性歯周病治療とメインテナンスをしていればよかった状態が、全身疾患を有した全顎的な問題に対して、エンド・ペリオ、矯正、インプラント、咬合再構成などを求められる状態ではないでしょうか。当然、診査・診断・治療計画の重要性、自分の専門スキルを高める教育訓練、他者による臨床や研究の知見をエビデンスとして臨床に活用する知識などの総合力のアップデートが必要になります。筆者がお伝えしたいのは、まさにこの変化が歯科医院経営において起こっているという観点です。 歯科医院経営において、経営学を活用する意義は、上記の臨床にたとえると、診査・診断・治療計画の精度を高めること、自分の直感や経験だけを頼りにするのではなく、経営学をエビデンスとして自院に最適な経営手法を選択し、実践できることです。たとえば、患者のニーズが多様化・高度化するなかで、地域の健康ニーズに応じた新しい治療メニューの導入が可能となります。さらに、効率的なリソース配分やスタッフの適切な管理は、業務プロセスの最適化やスタッフのモチベーション向上が図られ、生産性の向上と、コスト削減が達成されます。加えて、デジタル技術の活用やデータ分析を通じて、経営意思決定の質を向上させられます。 最後に、われわれ「Dent×BizAssociation」が大切にしているのは、読者の先生方の医療哲学を実現するサポートです。それによって先生方の地域の患者さんや一緒に働くスタッフ、連携先も含めた地域社会全体にとっての価値を最大化できるからです。そのために、われわれがMBAとして学び、実践を通じて失敗しながら得た経験則が少しでも役に立つことを願っています。刊行にあたって2024年12月園延昌志

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