10時間でわかる歯科経営学
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1)投資の目的を明確にする 患者サービス向上やスタッフの負担軽減など、投資の目的を明確にします。2)費用対効果を確認する 投資に対してどの程度の利益や効果が出るかを計算します。具体的には、投資の効果が長期間続くのか、累積効果があるのかなどです。3)資金の準備方法 自己資金、融資、リースの選択肢を考慮します。また、実際に投資を行っても思いどおりに進まないこともあるので、リスクを見込んでゆとりをもたせ、身の丈に合った資金の準備が必要です。 これらをもとに、医院の成長やサービス向上に繫がる投資かどうかを判断します。筆者の場合、投資の目的は明確であったものの、それ以外のポイントの確認が不十分だったといえます。2.理念の喪失と経営の迷走 当院の経営理念は、「みんながしあわせになる診療所」です。しかし、増築後は診療や資金繰りに追われ、心と時間にゆとりが失われ、理念に基づいた経営判断ができなくなっていきました。その結果、目標や方向性を見失い、「毎日を何とか乗り切るだけの診療所」へと成り下がってしまいました。 経営を改善しようと、テクニック寄りの経営書籍を読み漁り、あれこれやってはみるものの、一貫性のない対策が目立つばかりで、スタッフからは「院長が何をしたいのかわからない」との声が上がるようになりました。医院の雰囲気は変わり、笑顔や会話が減り、組織全体が冷え込んでいくのを感じました。私たちは完全に負のスパイラルに陥り、経営の迷子になってしまったのです。経営解説:資金繰りが悪化した際の近視眼的判断 資金繰りが悪化した場合、経営者は短期的な判断に偏りがちです。もし、資金や精神的にゆとりがなくなってきたときは、以下のポイントに要注意です。1)支払いや資金繰りのプレッシャー 支払いのための資金繰りに意識がとられると、他の業務が疎かになってしまい、長期的な計画や設備投資を考える精神的余裕がなくなります。時間や精神的なゆとりが欠如すると、判断基準が曖昧になり、短期的な利益を優先するなど場当たり的な対応が増えてしまいます。2)経費削減を急ぎすぎてしまう 資金を確保するために、経費を削減する必要がありますが、過度の経費削減は、サービスの質の低下や業務への支障、組織のモチベーションの低下に繫がる危険137

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