10時間でわかる歯科経営学
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成功・失敗事例から学ぶ実践的経営 歯科医院の経営は、技術の進歩や患者ニーズの多様化に伴い、ますます競争が激化しています。このような環境下で、経営者はつねに戦略的な判断を求められます。しかし、時に過剰投資が引き起こす経営危機に直面することもあります。 本項では、筆者の経験をもとに、過剰投資による経営危機の具体的なエピソードとその経営学的な解説を交えながら、過去の失敗から学んだ教訓を共有します。1.過剰投資とキャッシュフローの悪化 歯科医院の経営は順調で、患者数も増え、スタッフも恵まれた日々が続いていました。このころ、周囲から「勝ち組」と呼ばれ、経営者としての自信が高まっていました。 開業して5年が経過した2013年、手狭になってきた医院の規模拡大を計画しました。「流れが来ている」との曖昧な理由で、医院の増築を計画したのです。建築会社から見積もりを取ったところ、すべての業者から提示された金額は予算のほぼ2倍に達しました。その原因は、北京オリンピックによる世界的な資材の高騰でした。設計にもそれなりの費用をかけ、後に引けなくなっていました。そこで見積り額が最も安価な業者と交渉し、設計変更でコストを下げ、何とか当初の予算の2割増しの金額で建築を進めることになりました。そして、設備投資や新規採用を進めて、医院の規模は当初の3倍ほどになりました。しかし、医院は大きくなっても患者数はすぐには倍になりません。結局、当院の収入は横ばいのまま、経費だけが増え、キャッシュフローは急速に悪化し、自転車操業に陥りました。 「金のゆとりは心のゆとり」という言葉があります。この苦しいお財布事情は大きなプレッシャーをもたらしました。経営者としての重圧が増すなか、筆者はつねに資金繰りに追われ、経営がますます困難になっていったのです。経営解説:歯科医院の設備投資の判断ポイント 歯科医院の設備投資に関しては、以下のポイントが重要です。136 失敗事例:過剰投資による経営危機新見隆行 (群馬県・明治歯科診療所)第4章 ケーススタディ成功・失敗事例から学ぶ実践的経営1.目指せ! 「みんながしあわせになる診療所」

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