5.カスタマージャーニー 近年、歯科医院をとり巻く環境は大きく変化し、患者のニーズや感情は以前よりも速く、かつ多様化しています。単に治療技術や設備の充実だけでは、クリニックの差別化が難しくなっています。そこで、患者がクリニックを選び、継続的に通いたくなるためには、治療そのものだけでなく、患者がクリニックで感じるすべての体験を最適化することが重要です。こうした背景から、カスタマージャーニーという手法が、歯科医院経営においても注目されるようになっています。 このアプローチでは、来院前の情報収集から治療後のフォローアップまで、患者の行動や感情の変化を細かく分析し、全体的なプロセスを改善することで、患者の期待に応え、信頼関係を強化することが可能です。1241.従来のマーケティングとの比較1)従来のマーケティング(図1) 従来のマーケティングは、セグメンテーション(市場の分類)、ターゲティング(重点顧客の選定)、ポジショニング(差別化戦略)の3つ(STP)を軸に展開されてきました。市場を年代や趣味、ライフスタイルで分類し(セグメンテーション)、そのなかから影響力の大きい層に焦点を当て(ターゲティング)、自社の強みを打ち出して競合との差別化を図る(ポジショニング)という手法です。このように、企業は独自の価値を顧客に伝えるための戦略を長年活用してきました。 これを私たち歯科業界で考えると、たとえば高齢者向けの欠損補綴治療に注力する医院であれば、地域の人口動態を調査し(セグメンテーション)、入れ歯やインプラント治療を求める高齢者層に焦点を当てます(ターゲティング)。さらに、「りんごも丸かじりできる入れ歯」や「最短1日で終わる痛みの少ないインプラント」といったキャッチコピーで差別化を図り(ポジショニング)、他院との差を明確にすることなどが該当します。 カスタマージャーニーとは?渡部平馬 (新潟県・大通り歯科)第3章 医院運営の手段と仕組みを理解し、実行力を身につける5.カスタマージャーニー患者視点での体験デザイン
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