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書評

デンタル・プレゼンテーション

[著]内山 茂


 「プレゼンテーションの才能は天性のもの」と、本書を読むまで本気で思っていました。研修会や学会で講演されている百戦錬磨の先生方には、もともとプレゼンテーション能力が備わっていて、緊張とも無縁なのだろうと。それにひきかえ私ときたら、講演の機会をいただくたびに、いつも心臓バクバクで、頭のなかは真っ白。緊張しすぎて舞い上がって、何を話したのかも覚えていない……。人前で喋る才能がないことを自覚する私は、プレゼンテーションのたびにプレッシャーを感じ、なかなか苦手意識を拭えずにいました。しかし、本書を読んで考え方が変わりました。

 本書は、歯科専門職種向けのプレゼンテーションスキルにフォーカスした、非常にユニークで画期的な書籍です。

 総論では、プレゼンテーションに臨む心構えやマナーについて、具体例を提示しながら解説しています。各論では、プレゼンテーションの構成、フォントの大きさや色使い、スライドの枚数など、プレゼンテーション資料の作成時に押えておくべき基本的な事柄から話し方まで、具体的に解説されています。講演者が直面する「何をどうしたらよいか」という疑問を解消でき、ステップごとに理解が深まります。

 不安だらけのプレゼンテーション初学者には、親身になってアドバイスしてくれる「コーチ」が必要です。しかし、いつも「コーチ」がそばにいて助言してくれるような恵まれた環境にいる人は少ないと思います。本書はプレゼンテーションのエキスパートである内山 茂先生が、時にご自身の体験を交えながら解説しているので、まるで内山先生がそばで励ましてくれるよう気持ちで読み進めることができます。

 よりよいプレゼンテーションとは、「相手に伝わる」ものであると、本書では定義しています。なかでも心に響いたのが、「準備と努力は裏切らない」という言葉です。経験が浅いプレゼンターが相手に伝えるためには、何より準備を重ね、繰り返し練習をすることが大切だと痛感しました。

 あとがきに書かれた内山先生のメッセージには、「楽(愉)しむ」という言葉が繰り返されています。毎回、私は楽しむ余裕もなく、汗だくになってプレゼンテーションをしていますが、話し手、聞き手双方がプレゼンテーションを楽しむためには、プレゼンターである話し手が、何を伝えるかを深く考え、そして自分の言葉で話せるように経験を積むことが大切なのだと考えさせられました。

 歯科衛生士も、自分たちが行ったさまざまな成果を積極的にアウトプットしていくことが求められる時代になりました。「初めてプレゼンテーションを頼まれたけど、何から始めたらよいの?」という方から、「すでにプレゼンテーションは経験しているけど、あれでよかったのかな?」と振り返りたい方まで、プレゼンテーションを学びたいすべての方にとって必読の一冊です。

文・小原由紀
東京医科歯科大学口腔健康教育学分野・歯科衛生士

デンタル・プレゼンテーション

デンタル・プレゼンテーション
 

[著]内山 茂

B5判変形・128頁・オールカラー
定価(本体 4,200円+税)


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